ヒトの体液量及び血圧の調節に関与する最も重要な内分泌系はレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系である。その第1ステップである傍糸球体細胞におけるレニン分泌は、遠位尿細管において特殊分化した上皮細胞である密集斑細胞macula densa cellが尿細管益虫のNa^+とCI^-濃度をセンスして、そのシグナルを傍糸球体細胞へ送ることによってトリッガーされることが知られている。ところが、密集斑におけるNaCIセンサーのメカニズムについては未だに全く不明である。本研究計画では密集斑上皮細胞の管腔側膜上のチャネルやトランスポータが協力してこのNaCIセンサー機能を果たしているものとの仮説のもとに国際的共同研究を組むことによって、そのメカニズムを分子レベルで解明することをめざした。 昨年度は、ウサギ腎密集斑細胞膜にCa^<2+>透過性カチオンチャネルの存在を世界ではじめて明らかにすることができた。また、同細胞に発現するK^+(ROMK1)とNa^+/H^+交換トランスポータ(NHE3)の遺伝子の強発現系を卵母細胞及び哺乳類動物腎由来株細胞において確立し、ROMK1チャネルは細胞外Na^+濃度変化をNHE3を介する細胞内pH変化を介して感知することを明らかにした。 本年度は、同細胞膜に大きなコンダクタンスのアニオンチャネルの存在を確認し、本チャネルはATPをも透過させることを明らかにした。更には、細胞外のNa濃度を低下させると本チャネル活性は著しく抑制されるというNaセンサー機能を持っていることが明かとなった。ATPレセプターを発見したPC12細胞をバイオセンサーとして、本チャネルからの細胞外にATPが実際に放出されるかどうかを調べたところ、細胞外Na^+濃度を上昇させたときにのみ有意にATPの放出が検出された。また、同細胞間膜に水チャネルの発見を機能的のみならず遺伝子的に確認した。
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