研究分担者 |
皮 細庚 上海外国語大学, 日本文化経済学院, 教授
三宅 登之 東京外国語大学, 外国語学部, 講師 (40259213)
平井 和之 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (10199028)
臼井 佐知子 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (70185007)
小林 二男 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (10107831)
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研究概要 |
中華人民共和国の建国後,簡体字が教育面で果たしてきた役割には非常に大きなものがある。正字としての簡体字の普及と定着に対して中国政府が現在でも依然として大きな努力を払い続けていることは,多くの文献が示すところである。 しかしながら,「文化大革命」が終結し,改革・開放の時代を迎えるようになり,香港やその他の華人社会との交流が活発になるとともに,!様々の要因から簡体字の維持・普及に逆行する動きも現れてきた。基本的には古典を対象とした分野に限られてきた繁体字が,広告一宣伝などの分野,漢字を理解する外国人(華人や日本人など)の関係する分野などで大量に使用され,これらは一般大衆に対し,日々大きな影響を与え続けている。さらに庶民の間で永く伝えられてきた一種の略字とも言うべき俗字も依然として広く用いられ続けており,漢字をめぐる状況は決して単純ではない。中国人との交流がますます拡大している今日,日本における中国語教育でも,活字の簡体字のみを対象としていればよい時代とは言えなくなった。 中国各地て漢字の使用実態を調査し,規範化との関連を探るとともに,それを日本における中国語教育にも生かすことがプロジェクトの目的である。3年計画の1年目であった平成10年度は,文字関係の中国側文献を集めた資料集を刊行するとともに,北京,上海,香港等5都市での調査を行った。後者に関しては平成11年度中に新たな資料も加えて報告集を刊行する予定である。また,漢字はその視覚的な側面からシンボリックな使い方も多く見られる。「寿」の字が誕生祝い(結婚式ではない)に用いられ,「福」の字を上下逆さに張り「福が来た」(「福が逆さになった」と同音)を表すなど,日常生活の中で漢字は様々な使われ方をしている。シンボルとしての漢字の利用も,2年目以降のもう一つの課題として取り組む予定である。
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