研究分担者 |
川島 郁夫 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (60204715)
臼井 佐知子 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (70185007)
小林 二男 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (10107831)
三宅 登之 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (40259213)
平井 和之 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (10199028)
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研究概要 |
この3年間,現地調査を踏まえて中国の文字使用の実態について考察を行なった。最終年度である平成12年度は,「筆写文字の研究」,「俗字・略字等の歴史的使用実態の研究」,「標示などに単独で用いられる漢字の研究」という文字をめぐる三つのテーマを扱い,その結果を4種類の報告集として刊行準備中である。一部は昨年の研究を引き継いで更に考察を深めたものであり,一部は今年度新たに取り組んだものである。 近年,漢字の機械処理などの発展に伴い,中国においても筆写文字は全体的にはその使用範囲が狭まってきていることは事実である。しかしながら,日常生活においては,個人の私信,推薦書,紹介状,各種メモ,領収書などで依然として筆写文字が一定の使用領域を占めていることも事実である。ところが,日本の中国語教育の現場では活字教材のみが用いられ,筆写文字を目にする機会はほとんどない。そのため,実務についても中国人の書いた手書き文字が判読できないといったことが多い。同じ漢字とは言いながら日中のくずし方の違いなどから判読が必ずしも容易ではないものがあるからである。そこで,注意すべき代表的な漢字の手書きの事例を数多く集め,そのくずし方のルールを研究した。 歴史的研究では,研究分担者の一人が入手した安徽省と山西省の清朝・民国期の数多くの手書き文書の俗字・略字の使用状況と地域的・歴史的特色について考察した。正字・俗字などの問題が過去数十年間の問題に止まらないこと,日本の漢字の字体との関連も考えさせる興味深い問題を含んでいることなどの発見があった。 標示などに単独で用いる漢字は,主に漢字のシンボル的側面に焦点を当てたものであり,日本とは異なる中国人の文化を考える上でも無視できないものである。
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