初年度は研究目的を正確に達成するための基礎作業が行われることに主眼点が置かれていた。研究協力機関がタイ、香港、カナダ、ニュージーランドに分散しているので、意思統一と計画の有効な実施を確保することが必要であった。そのために、研究分担者が平成10年7月、9月に分けて4カ国をまわり、研究分担者と綿密な打ち合わせを行った。その結果、本研究においてはいろいろな条件から、タイのタマサート大学との協力が鍵になることがわかり、初期の一人に加えて数人研究分担者を追加した。また植田教授による北京での調査の結果、中国の研究機関の参加が必要であることもわかったため、平成11年度には北京大学法学部の教授数名が研究分担者に加わる計画を立てた。平成3年3月に研究分担者全員(やむを得ない事情によりカナダからの参加1名が確保できなかった)が九州大学の集合し、いままでの研究報告と、これからの具体的な計画遂行について意思統一がなされた。「アジアにおける法律制度の発展」という広い枠組みの中で、いくつかの個別テーマを選び、それに従った取り組みを、研究分担者だけにとどまらず各機関に所属する他の研究者の協力も得ながら直ちに開始することが決定された。アジアの経済危機という事態に直面し、法律制度についての理論的研究は緊急性すら感じられ、「商品売買における危険負担の法理」、「家族法」、「労働市場の変容に伴う労使関係法の変革」、「知的財産法の国際的調和」、「地方分権と憲法」、「各国における法学研究及び法律体系への国際公法の役割」、「法制史」、などの個別テーマについての研究が当面推進されることになった。なお、危険負担概念についての比較法的研究、養子縁組制度、商標法その他若干のテーマについては、3月の会合を利用してつっこんだ議論がなされた。
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