研究概要 |
1.視覚色素ロドプシンの構造と作用機構の解明は世界的な研究課題であるが、アメリカColumbia大学の中西グループはCD法をもって挑戦している。我々は独自に開発した「キラルフタル酸法」を適用して、合成中間体の光学分割とともにX線結晶解析法で絶対構造を決定できた:シクロヘプテンからビシクロ[5.1.0]オクタン-2,6-ジオールを合成し、キラルジクロロフタル酸を作用させて、モノエステル体のジアステレオマー混合物を得た。これはHPLCで分離できた。第二溶出成分を酸化後、加水分解して、7-オキソビシクロ[5.1.0]オクタン-2-オールとした後、p-ブロモベンゾエートとし、X線結晶解析により、その絶対配置を(1S,2R,7R)-(-)と決定できた。この結果は中西グループの結果と矛盾しなかった。このように、我々はキラルレチナール類縁体の合成中間体の絶対配置を明確に決定できた。 2.我々は円二色性スペクトルと絶対立体化学のデータベース化のために、各国の関係研究室からデータの提供を受けて、その集積を行っている。今回、特に多量のデータを持つドイツのKaiserslautern大学のKuball教授を招聘して、また研究代表者の原田をドイツに派遣してデータベース構築について共同研究を行った。 3.我々はアルコール類の光学分割と絶対配置決定の有力な方法としてキラルジクロロフタル酸法を開発している。今回、アメリカ、Illinois大学のPirkle教授との共同研究としてオルト置換ジアリールメタノール類の絶対立体化学の決定を行った:得られたキラルジクロロフタル酸エステルのジアステレオマー混合物はHPLCで容易に分割でき、また絶対配置はX線結晶解析法で明確に決定できた。また、キラル置換ジアリールメタノール系のCDスペクトルと絶対配置との相関関係を明らかにできた。
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