エネルギーや物質が持続的に注入、除去されている非平衡系においては、系固有の非線形成との結合によって、様々な巨視的かつ動的な現象が発生することが知られている。これはミクロスケールで発生した局所的ゆらぎが、マクロスケールなものへと成長した結果である。本研究では、光、熱、圧力、物質注入によって生ずる非平衡状態に焦点を絞り、その動的過程の追跡、解析を行った。その結果、電荷移動錯体、磁性半導体、金属錯体等数多くの物質で、非平衡かつ巨視的な相変化を観測することが出来た。また、外場によって生ずる局所的な揺らぎが、巨視的な相領域に発展してゆくことも、実際に確認することが出来た。さらに、これらの物質では、外場刺激強度に対する閾値特性、パルス的刺激への応答時間に孵化時間が存在する等種々の新規な特性が実験的に初めて明らかとなった。これらの新規な非線形現象・特性は、まさに外場刺激によって生じた局所的なゆらぎが、マクロな相へと発展するダイナミクスを反映しているものと考えられる。現在その理論的解析に取り組んでいる。さらに、この種の現象の研究は実験的にも、理論的にも多くの研究者の興味を集めつつあり、本年度は分担者の他に、フランスのレンヌ大のCailleau教授、ポーランドのブラツワフ工科大Luty教授との共同研究も開始した。
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