研究概要 |
以下の3点を中心に調査を行った. 1. ヒマラヤ形成に関わる環境変化と貝類分布調査:ヒマラヤ背後のタコーラ地域に温暖期に関連した氷河湖流出堆積物があり.その中に微小な巻貝類が密集している層準があることがわかった.これらはほとんどが陸貝であり,古土壌の存在とともに湿潤気候の存在を示すものとして注目に値する.また,淡水貝類ではモノアラガイの一種が融雪水の池などに生息しているのが確認された.タライ平原各地のクリークやため池では,カワニナとインドナイアの分布パタンの違いが確認され古環境指標としても有効である見通しを得た. 2. ヒマラヤ上昇に関する地質学的イベント抽出:中西部ネパール・スライコーラ地域のシワリク層の堆積相解析を行った.その結果.降水量の増大を示唆する堆積相の変化が,9.5Maに.河床勾配の増大によるとみられる蛇行流から網状流への変化が6.5Maに,MBT断層の活動によるとみられる礫質砕屑物の供給開始が2.5Maに起きたことが明かにできた.このことは.ヒマラヤ上昇の顕在化の前にモンスーンの発達が始まった可能性を示していて興味深い. 3. ポカラ盆地の水環境調査:フェワ湖及び流域の環境調査と水生植物相の変化についての調査を行った.フェワ湖は上流部では河川からの土砂流出による堆積が,下流部ではポカラ市からの排水流入による水質汚濁が大きな問題となっている.1994年に行った調査では確認されなかった浮漂植物のホテイアオイが今回は湖岸のほぼ全域を被っていたことから.この数年で爆発的に繁茂してきていると考えられる.湖岸から管見した限りにおいて4年前と植物相に変化は無かったベグナス湖やルパ湖へも早晩生育範囲を広げる可能性がある.フェワ湖流域で地理情報システム(GIS)を活用した流域管理を行うための情報収集も行ったが.正確な地形図が無いためGISの活用には限界があるものと感じられた.
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