研究概要 |
1.高輝度放射光を用いた実験的研究 SPring-8において円偏光変調法によるX線磁気円二色性(XMCD)実験を実施した.具体的な物質と目的は,Mn_3ZnC,Mn_3GaCペロブスカイトの磁気相転移に関する温度及び磁場依存性,高磁場下でのCeSbのメタ磁性転移の観測,Ho_3Fe_5O_<12>におけるキュリー温度近傍の高温領域での測定などである.得られた成果は,平成12年度では第11回X線吸収微細構造に関する国際会議,日本物理学会第55回年次大会(新潟大学),第14回日本放射光学会(広島大学)で発表された. 2.スピン電子状態に関する理論的研究 3d-4f化合物磁性体における希土類L_<2,3>-吸収端XMCDの理論的説明の定式化を行い,実験スペクトルの再現を実行した.その結果,4f-5d原子内交換相互作用と5d波動関数の収縮効果の他に,3d-5d原子間交換相互作用の重要性が明らかになった.様々の物質における固体効果をスペクトル計算にどの様に取り入れるか検討が進んでいる.これに依って,XMCDスペクトルの理論的解釈の完成に見込みが付いた. 3.放射光実験装置の開発 SPring-8に最高磁場10Tの超伝導マグネットを設置し,高磁場かつ低温でのXMCDスペクトル測定に成功した.ダイヤモンド高圧セルを用いた高圧下での実験も実施した. 4.研究者の交流 岡山大学とグルノーブル大学(フランス科学院結晶学研究所)の間で延べ4名の研究者の交流を実施した.平成12年度では,第11回X線吸収微細構造に関する国際会議(2000年7月26日〜31日,赤穂)に,グルノーブル大学から2名の研究分担者を招聘し研究成果を発表した.引き続いて開催された第3回播磨国際フォーラム(7月31日〜8月3日,SPring-8)の場でも研究成果を発表し討論を行った.一方,岡山大学からも2名をグルノーブル大学と電磁波応用研究所(LURE,オルセー)に派遣し,共同研究の成果の取りまとめを行うと共に,最近の研究の進捗と動向に関する情報交換を行った.
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