システムモデリング(同定)は現実のシステムを記述する(数学的)モデルを構築することであり、本来何らかの目的を持って行われるものである。従来システムのモデリング(同定)に関する研究はこのような目的を意識することなく、手法そのものに関する議論を中心に行なわれていたため、研究の進展については近年やや行き詰まった印象を受ける状況に至っていた。そこで本研究では制御のためのシステムモデリングをどのように行なうかについての検討を行なうことをその目的とし、以下の研究を行なった。 1.複数個の局所モデルによる非線形システムモデルに基づく制御 操業領域あるいは時間によって、複数個の局所モデルの中から適当なモデルを一つ取り出す、複数個の局所モデルの組み合わせによる非線形システム・時変システムモデルの構築に対し、Kullback情報量と赤池情報量(AIC)の2つの情報量規範に基づいて、領域の分割と統合を適切に行なう領域の自動選定アルゴリズムを開発した。また海外共同研究者(Foss)とこのモデルによる制御について共同研究を進めた。 2.進化型計算法を用いた非線形システムの同定法に関する考察 遺伝的アルゴリズム、遺伝的プログラミングや進化戦略など生物の進化を模倣することによって最適化を行う進化型計算法に基づいて、一般的な構造をもつ非線形システムの同定法を開発するための基礎的な考察を行い、HammersteinモデルやWienerモデルなど化学プロセスのモデリングにも多く用いられている非線形モデルの同定について、柔軟で使いやすいアルゴリズムを開発した。さらに鉄鋼圧延プロセスの制御を開始するときのセットアップモデルの候補を自動的に生成し、作業者の経験を組み込んだモデルの構築を可能とする支援システムの構築を行なった。
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