研究概要 |
タイの異なる気象条件下で実施されている各種作付体系の特徴を明らかにし,栽培地域の環境条件から見た作物の栽培方法を生理生態学的に検討する目的で,圃場の温度および湿度を測定し,乾季における光合成能力を測定した. 露地と耕地内との気温較差を比較すると,最低気温は露地気温にかかわらずいずれの圃場も±1.5℃の範囲であったが,平均気温および最高気温は露地に比べ耕地内で低く,南部のように気温が高いほど気温較差が増大する圃場と,中央部のようにその傾向が明らかでない圃場が見られた.一方,湿度較差を比較すると,最低湿度,平均湿度,最高湿度とも概して露地に比べ耕地内で高く,南部では露地湿度が低いほど較差が増大したが,多くの圃場ではこの傾向が明らかではなかった.耕地内の微気象は,露地と比較して,平均気温,最高気温は低く,湿度は概して高く維持されていること,圃場により露地の気象条件と耕地内の微気象との関係が異なっていることが明らかになった. 各種果樹の光-光合成曲線を測定した結果,飽和光強度は樹種にかかわらず800〜1000μmolm^<-2>s^<-1>であった.飽和光下での光合成速度は6〜12μmolCO_2m^<-2>s^<-1>で,実際の光合成速度の平均は3.1〜10.1μmolCO_2m^<-2>s^<-1>の範囲であった.光合成速度は葉の着生方向および着生位置と特定な関係は認められなかったが,気孔コンダクタンスとの間に高い相関が見られた.すなわち乾季におけるみかけの光合成速度は気孔開度に影響する湿度条件が大きな制限因子であることが明らかとなった.
|