本年度は、カリフォルニアにおける先端的塩類集積問題管理技術についての現地調査を行うとともに、前年度より継続しているパキスタン国ファイサラバード周辺地域における塩類集積農地の修復に関する現地でのデータ収集、分析を実施した。カリフォルニアでは、この地域の塩類集積防止策、除塩を行った排水の利用と処理技術について情報の収集を行うとともに、関係機関の研究者、技術者と今後の塩類集積問題への対応のあり方について意見交換を行った。塩分濃度の高い排水を段階的に耐塩性の高い作物・樹木に潅漑水として適用し、最終的に蒸発池で処理するという方法が内陸部の除塩では有効である事が明らかとなった。また、パキスタンにおいては、実証圃場において排水の改良や除塩用水の追加的供給といった直接的な改善方策に加えて、それを補完する耕起方法(深耕)、有機物の投与などを行い、塩類が集積していた農地の修復に成功した。この実証圃場では、米の作付けを行い、塩類集積の発生していない周辺農地と同等の収穫を得ることが出来た。この検討の中で有機物の不足が土壌微生物の活動や、土壌の物理理性に悪影響を及ぼし、塩分濃度の上昇という直接的な問題を一層深刻なものとしている事が、明らかとなった。さらに検討対象地域のエジプトにおいては、前年度収集した情報・資料を基に、デルタ地域における潅漑用水の管理方法を中心に検討を進め、地域の作付け体系に対応した効率的な水配分や管理方法のあり方について研究を行った。
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