本年度は、過去3ヵ年の研究成果を広く公表するため、研究協力者、関係研究者を集めた、国際セミナーを開催した(2000年7月)。このセミナーには、パキスタン、カリフォルニア、エジプト等の塩類集積問題の研究者が出席し、技術的な問題ばかりでなく、社会・経済的な側面から、塩害問題の解消、乾燥地域農民の自立といった問題について討論を行った。 また、前年度より継続しているパキスタン国ファイサラバード周辺地域における塩類集積農地の修復に関する現地でのデータ収集、調査、分析を実施した。パキスタンにおいては、実証圃場において排水の改良や除塩用水の追加的供給といった直接的な改善方策に加えて、それを補完する耕起方法(深耕)、有機物の投与などを行い、塩類が集積していた農地の修復に成功した。また、ミクロレベルで発生している塩害の発生メカニズムについて、地下水位、有機物、耕起法などの観点から検討を加えた。この検討の中で有機物の不足が土壌微生物の活動や、土壌の物理性に悪影響を及ぼし、土壌塩分濃度の上昇が引き起こす作物に対する被害を一層深刻なものとしている事が明らかとなった。さらに検討対象地域のエジプトにおいては、これまでに収集した情報・資料を基に、デルタ地域における潅漑用水の管理方法を中心に検討を進め、地域の作付け体系に対応した効率的な水配分や管理方法のあり方について研究を行った。また、エジプトとパキスタンにおける塩類集積の問題について、比較検討を行った。
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