これまでの3ヵ年の研究を通して、乾燥地域の資源管理のあり方について指針を示す事ができた。乾燥地域の水や土の管理は、地域の自然、社会、経済条件によって大きく左右される。乾燥地域の農業では、灌概の導入により、一定の期間は高い高い農業生産を維持できるものの、適正かつ効率的な土地や水資源の管理が行われなければ、徐々に地下水位の上昇や土地の荒廃を招き、それが塩類集積や砂漠化へとつながり、持続的生産を行うことが不可能となる。一方、地下水位を下げすぎると灌漑必要水量が多くなり、灌漑用水量の増大を招く危険性もある。このため、一定の範囲内に地下水位をコントロールすることが重要であり、塩類集積と地下水位の微妙なバランスを維持することが重要となる。 一方、圃場レベルでは同程度の地下水位でも、塩害の発生する場合と、発生しない場合があり、それは耕起法、灌漑の方法、土壌の構造や有機物量、さらには微生物量といった、ミクロな条件に左右されることが明らかとなった。 今回の研究においては、乾燥地の農業生産にとって重要なパラメーターの詳細な調査とマクロレベルの地下水位と水管理および圃場レベルの耕作方法(耕起、有機物投入等)の分析により、塩害発生のメカニズムを明らかにすることができたと考える。カリフォルニア農業の例からも明らかなように、適正な水(用排水)や土地資源の管理(耕作)を行うことにより、乾燥地域においても塩害問題を克服し、持続的な農業生産を行うことが充分可能である。
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