マウス後天性免疫不全症候群(MAIDS)はLP-BM5マウス白血病ウイルスの感染によってひき起こされ、脾腫、リンパ節腫大、T、Bリンパ球機能低下が特徴である。MAIDSマウスでのマイコバクテリア感染抵抗性を検討した。Mycobacterium aviumまたはM.bovis(BCG)の腹腔内感染に対して、MAIDSマウスでは正常コントロールマウスに比較して、死亡率の増加と臓器内菌数の増加が認められた。BCG感染7日目のNK細胞とγδ型T細胞の増加がみとめられず、また感染28日目のPPD反応性CD4^+Th1細胞の出現の程度も低かった。感染後のIL-1α、IL-6産生はMAIDSマウスでむしろ、増加していたが、IL-15とIFN-γレベルはMAIDSマウスで低下していた。以上の結果から、MAIDSマウスでは感染早期にマクロファージのIL-15産生能が低下しており、感染早期の防御を担うNK細胞やγδ型T細胞の活性化がおこらないと考えられた。次に分泌型IL-15cDNAを用いてトランスジェニック(Tg)マウスを作製した。IL-15Tgマウスで胸腺でのT細胞分化は正常マウスとかわらなかったが、脾臓、リンパ節でのメモリ型CD8T細胞が有意に増加していた。このIL-15Tgマウスを用いて、LP-BM5マウス白血病ウィルスの感染によってひき起こされるMAIDSの発症程度を生存率、脾腫、異常リンパ球(Thy1陰性、Fas陽性、IgMdull細胞など)の出現頻度、LP-BM5 viral DNAのintegration量で検討したところ、著明にMAIDSの進行が抑制された。IL-15産生不全がMAIDSの病態形成に関与していると考えられ、IL-15によるAIDS治療への応用の可能性が示唆された。
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