研究課題
国際学術研究
近年欧米では、Evidence Based Medicine(EBM)の考え方に立ち、臨床医療のみならず予防活動についても、科学的根拠の評価が行われ、それに基づく勧告が行われている。その結果、実施すべき根拠が乏しいとする検査のいくつかが、わが国では職域健診で義務となっている。欧米の結果をそのままわが国に適用できるとは限らないが、医療資源の限界等を考えると、健診項目の有用性の評価とそれに基づく予防活動の改善が早急に必要である。そこでこうした欧米の最新の動きを学術交流によって学び、その考え方や方法を、わが国の職域定期健診項目の評価に導入するため、健診の各項目のうち肝機能検査と尿検査について、スクリーニング検査としての有効性を、効果と効率の面から実証的に示すのが本研究の目的である。まず平成10年7月に、国内の研究協力者と申請者らは、東京で本研究課題について研究会を行いEBMの基本概念の整理や、欧米での動きについて情報収集を行った。また、特に予防活動や保健医療政策の基本にEBMを取り入れている英国の状況収集を分担研究者が、また研究代表者は米国の研究者とのうち合わせを訪米して行った。以上をふまえ、平成10年10月に米国の分担研究者に日本・英国の研究協力者も加えて、研究全体についての検討と、公開のシンポジウムを行った。この中で、米国の研究者からは、米国政府予防医療研究班の評価方法の報告が、英国の研究者からは予防活動についてのハイリスクアプローチと集団アプローチの対比、および後者の重要性についての報告があった。実証研究としては、肝機能検査については、脂肪肝に対する超音波検査など確定診断検査を全員一律に行った事業所の約4千件のデータを用い、定期健診の血液検査項目が、目的疾患を検出する鋭敏度と特異度を求めるための調査を行った。また、尿糖検査の糖尿病患者発見についての鋭敏度、特異度を、人間ドックデータを用いて調べ、その有用性と適正な検査条件を検討している。