研究分担者 |
加美山 隆 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (50233961)
戎 健男 神戸大学, 理学部, 助手 (50090543)
武藤 豪 高エネルギー加速器研究機構, 物構研・中性子源研究系, 助手 (90249904)
増田 康博 高エネルギー加速器研究機構, 物構研・中性子源研究系, 助教授 (60150009)
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研究概要 |
この研究は,中性子の電気双極能率(nedm)の測定制度の向上を目的としている。CPの破れは現基礎物理学の基礎課題である。nedmはそれに密接に結びついている。 また,CP問題は時間反転の破れを意味しているが,この直接的証拠がnedmに求められる。最近の超対称性理論によれば,いままで説明できなかった宇宙のバリオン数過剰が説明できるだけでなく,nedmの大きさも此の研究でめざしている大きさに近い。 1992に行ったこの研究の概要は,http://newton.ex.ac.uk/aip/glimpse.txt/physnews.68.1.htmlに引用されている。これによってnedm値改善には,液体ヘリウムによる超冷中性子原を使用するという基本方針が確立し,この基本的手法をいかに実現するかという,新しい測定装置の開発が研究の焦点となった。 現在のnedm上限値に一桁の改善をもたらすには, 1) 超流動ヘリウムによる超冷中性子の大量発生(スパレーション冷中性子源併用), 2) それに付随する超伝導ソレノイドによる安定磁場, 3) nedm測定を超流動ヘリウムそのものの中で行う という3つの基本概念に基づく設計研究が進められ,装置はMark3001と命名された。 この結果spallation sourceからの大量の冷中性子を浴びながら,かつ,液体温度を0.5Kに保つCooling Towerl仕様検査に合格している。 これに平行してnedm測定に欠かせないlpT以内の変動に抑えられた1uTの磁場発生研究も行われた。これは3重の常温磁気シールド中に超伝導磁気シールドを設置し,更に,その中に超伝導ソレノイドを設置したものである。 これに先だち,超伝導シールドのl/15模型を製作しシールド効果を理論値と比較し完全な一致を観測し,3重の常温磁気シールド効果-40dbと超伝導シールドの-32dbと併用すれば初期のシールド効果が期待できた。 磁場の測定は液体ヘリウム中でSQUIDシステムを起動して行われ,超伝導磁気シールド中での磁場の時間的安定度についても研究された。 それによれば常温で行われたILLの磁場を遥かに凌ぐ安定度がしめされ,目的の1uTの磁場の発生も決して夢ではないことがわかった。 '96迄の重点領域研究でクライオスタットの熱流入制御に関して研究が続けられたが,それを受けて本年度ではクライオスタットの改良が行われた。 一方実験候補地としてILL,PSIとの交渉が行われ,現段階ではedm測定で有名なSussex大学とRNLが呉大学,KEKと協同歩調をかためつつあり,Sussex大学,ILLの若手研究者が訪日し、当クライオスタットを用いた最初のビーム実験がALLに本年中に提案される。
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