研究概要 |
本研究は「遺伝的にプログラムされている」と言われているサケの産卵回遊の遺伝子プログラムの実体を明らかにすることを目標に,実験・調査研究を行い,以下の結果を得た. 1.産卵回遊にともなう神経ホルモンおよび下垂体ホルモン遺伝子の発現変動の定量的解析: 1993年以降これまでに採取した石狩川系および大槌川系のシロザケの脳と下垂体の組織試料を用いて,母川回帰時のシロザケの神経ホルモン遺伝子および下垂体ホルモン遺伝子の発現変動を解析した,また,遺伝子の発現変動の生理的背景を知るために,血中ステロイドホルモンあるいはNa濃度を定量した.このような繁殖時の遺伝子発現の変動の解析に加えて,サクラマスを用いて遺伝子発現の年周変動を解析した.得られた結果は,ホルモン遺伝子の発現調節機構にステロイドホルモンが関わっており,未成熟時にはアンドロゲンおよびエストロゲンが,最終成熟時にはプロゲスチンが主要な役割を演ずることを示している. 2.真骨魚類の膜結合型および可溶性型グアニル酸シクラーゼ遺伝子の構造解析および発現解析: これまでにメダカで得られている膜結合型および可溶性型グアニル酸シクラーゼのcDNAと遺伝子DNAの配列データを明らかにするとともに,それらの発現部域を明らかにした.さらにヒメマスの嗅細胞cDNAライブラリーを作製し,同酵素のcDNAを得た. 3.シロザケの系群間におけるミトコンドリアDNAコントロール領域(D-loop)の塩基配列の比較解析: 北洋のシロザケの母川を推定するために,系群内および系群間におけるミトコンドリアDNAコントロール領域(D-loop)の塩基配列の変異度を解析し,予想に反して相同性が高いという結果を得た.
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