研究課題/領域番号 |
10102003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福山 寛 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (00181298)
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研究分担者 |
神原 浩 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (00313198)
大野 圭司 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (00302802)
樽茶 清悟 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40302799)
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キーワード | 低温走査トンネル顕微鏡 / 単原子層膜 / 核磁気秩序 / 超低温 / 低次元電子 / 電子間相互作用 / 朝永-ラッテインジャー液体 |
研究概要 |
1.超低温・高磁場・超高真空の複合極限環境下で原子分解能をもって作動する超低温走査トンネル顕微鏡の建設を終了した。T=200mK、B=6Tの条件下でテスト実験を行い、グラファイト表面のSTM像で原子分解能が得られることを確認した。この装置では、劈開またはイオンエッチング/アニールなどで準備された清浄試料表面を低速電子線回折装置で評価し、超高真空を破ることなくSTM観測室に搬送することができる。テスト実験では、試料または探針を交換して最低温度に戻るまでの一連の作業が3時間という短時間で終了することも実証された。 2.グラファイト表面に吸着した単原子層^3Heの低温物性を測定するための核断熱消磁冷凍機の建設が終了した。テスト冷却において、試料セルの最低温度で190μKを得た。現在、磁場中(B<IT)比熱測定セルとNMRセルの製作を進めている。また、空格子点のスピンホーラロン効果に依ると見られる中間温度域(10mK<T<50mK)の比熱異常を精密に測定するための小型高感度CMN磁気温度計を製作し、所定の分解能を有することを確認した。 3.量子ドットでは、2種類のスピン一重結合が同時に関与する新しい近藤効果を見出した。また、近藤効果と弾性コトンネルの競合現象を明らかにした。2重結合ドットの強磁場中の電子状態を調べ、トンネル結合と電子相関でできる最大電子密度液滴の安定性の関係を明らかにした。 4.2重量子細線のクーロンドラッグの実験を進め、2本の細線のうち片方が極めて希薄な電子系、他方が単一モード電子系の場合に、希薄電子系のウィグナー結晶化に起因すると思われる負のドラッグ効果が出現することを発見した。これは状態密度の直接測定で検証できると思われる。 5.極低温表面走査プローブ装置については、STMヘッドを除いて装置(冷凍機、超伝導磁石、試料交換真空室)を組上げ、性能を確認した。STMヘッドについては、室温大気中でグラファイトの明瞭な原子像を観察し、良好な基本性能を確認した。現在、装置本体にSTMヘッドを取り付け作業中で、除振と冷却効率の改善を施した後、年度内に低温磁場中でのテストを予定している。
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