研究概要 |
本研究においては、我々が独自に開発した「二次元表示型球面鏡分析器」のエネルギー分解能を25meV程度と飛躍的に高めた分析器を制作し、二次元物質や一次元物質、および固定表面の電子エネルギーバンド分散の二次元測定(バンドマッピング)を精密かつ完全に行い、高温超伝導体や特異な表面電気伝導度などの新奇な電子物性のメカニズムを解析することが目的である。これを使用すれば、電子物性にとって最も重要なフェルミ面付近の電子状態を二次元的に正確に測定することができるので,高温超伝導など種々の電子物性のメカニズムを解明する重要な手がかりを得ることができる。 今年度は、新しい「二次元表示型電子エネルギー分析装置」の組み立てと、それを収容する専用の「超高真空槽」の整備を行った。今回の分析器は, エネルギー分解能を向上させるため、従来20枚程度だった障害リングの数を200枚程度に増やし、障害リングの形も球面から最適曲面に変更した。材質も, これまでの, 金属からセラミックに変え、そこに彫った溝に金属を埋めこむ方式とした。セラミックのマセライトSPの加工は, 25ミクロンの精度を要求し、溝は複雑な曲面に垂直に彫るという現在の最先端の加工技術を要求したため, 一度では成功せず, 作りなおしを行った。その間, 溝に電極を埋めこんで, 電極間のセラミック表面にグラファイトを塗って薄膜皮膜抵抗を作成する練習を繰り返した。スプレーやエアブラシなど様々な塗布の保々を試し, 数十kΩの均一な膜を作成することに成功した。また, 溝に埋めこむ電線を圧縮するジグを作成し, 極めて平坦な電極を曲面上に作る技術を確立した。現在は, 上記の技術を用いて, この曲面の表面を仕上げているところであるが, 完成にはもう少し時間が必要である。その後, 超高真空槽に組み入れ、現有のマイクロ波放電型の光源を使用して、性能試験を行う予定である。
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