研究概要 |
本研究においては、我々が独自に開発した「二次元表示型球面鏡分析器」のエネルギー分解能を25meV程度に高めた分析器を制作し、低次元物質や固体表面の電子エネルギーバンド分散の二次元測定を精密かつ完全に行い、高温超伝導体や特異な表面電気伝導度などの新奇な電子物性のメカニズムを解析することが目的である。 本年度は試料を保持,過熱冷却,および試料の2軸回転機構を備えた試料ステージの作成を行った。これにより,超伝導体の冷却が可能になり,ギャップの測定の準備が整った。「試料搬送システム」を作成し,現有の他の装置で作成した表面新物質試料を,この分析器まで汚染されずに超高真空中を搬送できるようにした。 「二次元表示型電子エネルギー分析装置」については,昨年に引き続き組み立て調整を行っている。セラミック外球の加工は,精度と複雑な曲面形状のため何度か作りなおしを行ったのち完成した。その溝に電極を埋めこみ,電極間のセラミック表面にグラファイトを塗布し,数百kΩの抵抗薄膜を作成することに成功した。現在,超高真空槽に組み入れ、現有のマイクロ波放電型の光源を使用して性能評価の試験を行っている。 研究対象とする表面電子物性についても,昨年購入したSES2002型光電子分光分析装置を用いて研究を進めた。特異的に高い表面電気伝導度を持つSi(111)表面上のIn吸着系について高分解能の測定を行い,バンド構造と電気伝導度の関係を議論した。また,新しいバンドを発見した。2次元エネルギーバンドの測定も引き続き行い,励起光の偏光と強度分布のエネルギー依存性をはじめて測定できた。また,バンドの3次元プロットもできるようになった。また,円偏光励起の2次元光電子パターンから原子配列の立体写真を測定する,という発明を行った。
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