研究概要 |
本研究においては、我々が独自に開発した「二次元表示型球面鏡分析器」のエネルギー分解能を、25meV程度と従来の5倍から10倍程度に飛躍的に高めた分析器を制作することが目的であった。これを用いて、二次元物質や一次元物質、および固体表面の電子エネルギーバンド分散の二次元測定(バンドマッピング)を精密かつ完全に行い、高温超伝導体や特異な表面電気伝導度などの新奇な電子物性のメカニズムを解明する重要な手がかりを得る。 新しい「二次元表示型電子エネルギー分析装置」の製作は完了した。エネルギー分解能を向上させるため、従来20枚程度だった障害リングの数を200枚程度に増やし、障害リングの形も球面から最適曲面に変更した。材質も,これまでの,金属からセラミックに変え,そこに彫った溝に金属を埋めこむ方式とした。電極間のセラミック表面にグラファイトを塗って数十kΩの均一な膜を作成することに成功した。その後,超高真空槽に組み入れ、現有のマイクロ波放電型の光源を使用して、性能試験を行った。性能試験はまだ途中であり、従来のエネルギー分解能の2倍には高まっていることを確認した段階である。現在は、試料上での励起光のスポットが設計値より大きくて分解能が上がらないので、励起光を収束する装置を取り付けて試験を行うところである。 研究成果としては、目標の一つであった「電子エネルギーバンド分散の完全測定」には成功した。3次元のエネルギーバンドを初めて測定し、真空紫外国際会議でベストポスター賞を頂いた。「電子エネルギーバンド分散の精密測定」についても、購入したScientaSES2002を用いて「ホールバンドの精密測定」に世界で初めて成功した。レーザーを用いた励起準位の測定も、装置の組み立てが終わり、有機分子Alq3の発光の下地依存性が測定できた。また、この分析器を用いて、原子の配列構造を200億倍に拡大した立体写真を直接撮影することに世界で初めて成功した。この研究の成功は、NHKのテレビニュースでも大きく取り上げられた。
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