民具や情景に現れる民族の特性をひとたび数量的に記述することができれば、多変量解析によるさまざまな科学的解析が可能になり、新しい人文科学の手法の確立が期待される。本研究では「かたち」についてこれまで開発してきた対称性解析にもとづく各種の計量の方法によるツールの整備と応用を図ることを目的とした。また、色について、カラー画像入力データからマンセル表色系へ変換し、また、色スケールを導入して、その同時入力による色補正法を開発し、人文科学向きの色解析のためのツールの整備と応用を図ることを目的とした。本年度は、とくにコンピュータプログラムの完成度を高め、また、数量的記述の方法の開発と解析への応用を進めることを目標とした。 ツールの整備については、これまでに開発してきた、入力画像から「かたち」の対称性解析に至り、さらに、その結果にもとづいて主形状を求めるだけでなく、規格化形状を生成して局所幅関数とくびれ関数を求める方式およびコンピュータプログラムの完成度を高め、洗練化を図った。さらに、人文科学への応用の事例として、同一人物によるひらがな書体に適用した結果、毛筆と筆ペンの違いが局所幅関数とくびれ関数として数量的に明確に現れ、解析の示唆を得ることができた。また、色については、マンセル表色系変換のプログラムを製作し、開発した簡便な色補正法について実験的に評価するとともに、その利用の指針を与えた。さらに、等色と照明の問題について検討するとともに、自然物と人工物における色を解析するということの意味の違いを明確にした。
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