1) 1995年以来の共和党多数議会による外交イニシアティヴのいくつかが、主として共和党を支持する団体の影響を強く受けていることは明かである。たとえば、クリスチャン・コアリションが選挙の年に作成する全議員の成績表には、採点基準となる法案に、宗教的迫害からの自由法案と、海外での人工妊娠中絶に対する資金援助の禁止法案が含まれていることが確認できた。これらはともに、対中国外交に直接関わる法案である。 2) また共和党多数派連合を支える多様な集団のなかに、国防タカ派が存在し、活発に活動を展開していることも重要である。この集団は中国による兵器の近代化とミサイル攻撃力、そして核技術の他国への移転を問題視しており、アメリカの国防費の増額を強力に働きかけている。この見解は共和党のなかでは完全に多数派となっており、ついにクリントン政権も1999年1月に1985年以来国防費を増額させることを決定した。 3) 下院は中国に対してきわめて強硬な態度をとっている11本のいわゆる「反中国法案」をすべて可決しており、上院もそのうちのいくつかを可決した。(ただし、まだ立法化されてはいない。クリントン大統領が拒否権を発動することが予想される。)また、クリストファー・コックス議員(共和党)は、現在クリントン政権による対中国ミサイル・衛星技術移転に関連した政治資金疑惑を調査中である。この結果次第では、クリントン政権に対する第2の弾劾問題となりかねない深刻な情勢である。 4) かくして現在の米中関係は、政権レベルでは相互接近がみられるが、多くの権限を握る共和党多数議会は、人権、囚人労働、宗教的自由の迫害、人工妊娠中絶、軍事的脅威、核技術の移転、人民解放軍の諸活動、そしてクリントン政権への政治資金の流入など、じつに広い範囲にわたる争点をめぐって政権と対立している。こんにちの米中関係のアメリカ国内における政治的基盤はきわめて脆弱であると考えられる。
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