研究概要 |
Magnetic resonance(MR)spectroscopyが神経細胞障害、脱髄、髄鞘形成不全各病態において、特徴的な所見を呈しうるか検討した。その結果を基礎データとし、MRIのみでは得られない代謝情報を加味させて、両麻痺における認知障害の検討を行った。研究対象は3歳以上の白質病変を有する中枢神経疾患患児24例である。(脱髄疾患:多発性硬化症5例,Alexander病2例を含む9例、髄鞘形成不全疾患:Pelizaeus-Merzbacher病5例、神経細胞障害疾患としてヘルペス脳炎、Tay-Sachs病,歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症,Leigh脳症など10例)また正常対照として3-15歳の小児10例もあわせて検討した。さらに両麻痺を呈する患児に対しMR imaging,proton MR spectroscopyを施行し運動障害の程度、総発達指数、総知能指数、その下位項目特に視覚空間認知障害との関連を検討した。 小児正常値の設定;正常対照児の頭頂葉白質にて得られたNAA/Crは1.71±0.27,Cho/Crは1.11±0.20であった。各病態におけるNAA/Cr,Cho/Crの検討では、神経細胞障害疾患:NAA/Cr;1.36±0.26,Cho/Cr;1.24±0.24、脱髄疾患:NAA/Cr;1.29±0.32,Cho/Cr;1.16±0.18、髄鞘形成不全疾患:NAA/Cr;1.83±.0.22,Cho/Cr;0.91±0.10、であった。脱髄、神経細胞障害疾患では正常に比しNAA/Cr比の明らかな低下を認めるが、髄鞘形成不全疾患では統計学的有意差を認めない。一方Cho/Cr比は、脱髄、神経細胞障害疾患では有意差がなく、髄鞘形成不全疾患にて正常に比し明らかな低下を認めた。視知覚認知障害を有する2例の脳性麻痺児では、NAA/Crの低下が右頭頂領域に認められ、脳性麻痺児の認知障害における脳内代謝動態異常を示唆する所見が得られた。
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