研究課題/領域番号 |
10116101
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
長崎 暢子 龍谷大学, 国際文化学部, 教授 (70012979)
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研究分担者 |
柳沢 悠 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (20046121)
広瀬 崇子 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (20119431)
絵所 秀紀 法政大学, 経済学部, 教授 (10061243)
秋田 茂 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (10175789)
小谷 汪之 東京都立大学, 人文学部, 教授 (00086943)
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キーワード | 南アジア / 1990年代 / 経済自由化 / グローバリゼーション / インド / ネットワーク / ヒンドゥー主義 / 環境 |
研究概要 |
本研究は、特定領域研究[南アジア世界の構造変動とネットワーク-多元的姓社会の発展モデルを求めて-]の総括班として、領域研究全体の統括を行ってきた。その内容的成果は大略以下の4点であり、本年はそのまとめのための活動を行った。 (1)実証的・理論分析が従来の水準に比べて格段に精緻化され、総合化された。例えば経済自由化・開放政策後の市場経済と政府介入の関係、企業、労務管理・労働意識の変化などをミクロ的、マクロ的に分析し、特に農業労働市場の統計分析、工場労働者意識、現地データと衛生製データを結合した環境の長期変動分析などで国際水準を超える成果を得た。あるいはインドの総選挙を21人の研究者の共同作業により諸州と中央の綿密な実態分析を行うなど、世界初の試みがなされた。「インド人民党・連立政権」時代への移行は、「一党優位体制」に固執した国民会議にたいし、ヒンドゥー・ナショナリズムによる大衆の組織、地方政党の取りこみ、連立を厭わない人民党の態度に起因したことが実証された。 (2)多くの斬新な視角の提示により、現代南アジアの再評価がなされた。例えば、戦後世界システムの規定要因を、冷戦体制を支えた米ソの軍事力・生産力にみるのでなく、東アジアの工業化・アジア太平洋経済圏の興隆にみることによって、独立後インドの工業化戦略が重工業優先・労働集約的産業軽視であったことの問題、その閉鎖的な貿易・通貨政策の失敗が90年代以前のインド経済開放的地域交易圏からとり残される結果を生んだことが明らかにされた。他方、パキスタンでは、中央集権体制成立の要因として、印パ分離独立という重圧とともに、インドからの移民の重要性が指摘された。 (3)多元的共生は、歴史的には、異なる宗教間の共生をはかる民族運動において、ヒンドゥーイズム・ジャイナ教の伝統のなかから「心理の多様性」として発掘されたことが解明された。その多様なかたちは、国家を超える移民ネットワークの分析のなかで、公共圏の創造という形でも発現している。また共生の問題は、生態環境と適合的なインド伝統的農法の解明、1980年以降の農村地域における非農業雇用の拡大がむしろ植林拡大を促進し、下層民のエンパワーメントにつながったことなど、現代的な環境保全要因の考察によっても追求された。 (4)2度にわたる国内、国際シンポジウムにおける印パ、欧米の研究者との交流や、インドのネルー大学において2001年に行った日印シンポジウムその他、国際、国内の成果報告と交流は、従来に比べ目覚しく進展した。さらに成果の一部は[現代南アジア](全6巻東大出版会)として本年刊行予定である。
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