研究課題/領域番号 |
10116107
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
広瀬 崇子 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (20119431)
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研究分担者 |
近藤 則夫 アジア経済研究所, 地域研究部, 研究員
濱口 恒夫 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (70030137)
長崎 暢子 龍谷大学, 国際文化学部, 教授 (70012979)
吉田 修 広島大学, 法学部, 助教授 (60231693)
井上 恭子 アジア経済研究所, 動向分析部, 主任調査研究員
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キーワード | 国民国家 / 地方分権 / 地域協力 / 国民統合 / 分離独立 / 国家主権 / コミュナリズム / 南アジア |
研究概要 |
最終年は本研究課題のまとめを行った。資料が不足している研究者は海外調査を行った。また4回の班研究会と全体集会、国際会議の合計6回の研究会を利用して、各自の研究成果を報告し、討論を行った。それらを通して以下の点が明らかになった。 1.南アジアにおける「国民国家」形成は、印パ分離独立によって大きなハンディを背負って出発したが、パキスタンの方がより大きな不利益をこうむり、それがその後の長期にわたる軍事政権をもたらす一要因となった。 2.複雑なエスニック問題を抱えるインドの国家形成(state-building)はイギリス統治時代の制度の多くを引き継いだが、時間の経過とともに地方勢力などの要求に譲歩する形で着実に地方分権化が進んでいる。90年代後半以降着実に発展している連立政権もその姿を反映している。99年総選挙の分析はそのことを証明した。 3.一方ネルー型の近代市民国家建設の試みは大衆を疎外させることになり、その結果国民統合(nation-building)にはさまざまな問題が生じた。その一つの反動がヒンドゥー・ナショナリズムであるが、90年代末にはそれすらも克服して全インド規模の強力なナショナリズムが台頭しつつある。それはインド人民党政府のめざす方向でもあるが、不自然さが目立つ。 4.メディアやITの発達それに経済自由化政策の推進は、国境を越えるモノや情報の流れを促進し、それが「国民国家」にも少なからぬ影響を及ぼしている。しかしこれは必ずしもナショナリズムを押さえるグローバリズムの方向に一直線に進むわけではない。 5.印パ関係を見ると、「国民国家」建設の矛盾が投影されている。核実験もその一つである。90年代後半は両国の敵対関係が全面に出た時期であった。この情勢を受けて、研究の方も、当初めざしていた国家間レベルにおける「国民国家」の相対化の側面は十分にフォローできなかった。反省点であると同時に今後の課題である。
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