研究概要 |
最高エネルギー宇宙線の起源を探る宇宙線望遠鏡計画のため高速デジタル信号処理回路を各入力信号ごとに付け、光電子増倍管にて捉える現象の頻度、強度、時間幅を広いレンジでプログラミングにて可変に扱い、S/Nを最大化しながらフルインテリジェントなトリガーおよびデータ収集を行う統合的システムを開発している。その一環として、本助成金により、プロトタイプ回路を作成し、その原理的確証と基本的性能を得た。 本研究にて開発されたプロトタイプは以下のようである。16本の光電子増倍管からのアナログ信号は差動化され、一組のツイステッドペアケーブルにて本製作基盤にフラットケーブルコネクタにて伝送される。6UのVMEバス仕様のユーロカードをベース基板に用い、その上に、16入力信号に対応する16枚のサブボード、その間をつなぐ内部データバス、内部バス制御用のCPLD、FPGA,および外部VMEバスとのインターフェースを制御するCPLD、プログラム格納用フラッシュメモリ、データー時格納用バッファーメモリからなる。上記サブボードの上には入力信号に対して、電荷を逐次積分しトラック&ホールドする機能を持つ回路部分の後、5MHzサンプルのパイプラインADCが入力信号を逐次5MHzずつ12ビットデジタルデータに変換し、その後段のデジタル信号処理素子(DSP)の内部メモリに送りバッファーする。DSPはバッファーされたデータ中30μ秒の範囲ごとにノイズ中にある物理現象からの信号波形らしき領域を探査し、その開始と終了時間をS/N最大となることを条件に決定する。その開始と終了時間、およびその信号波形の積分電荷を光電子増倍管ごとのトリガー用の予備情報としてイベントトリガーに送るように設計されている。 本研究により、この信号認識回路の設計開発とラボでのテストを行い良好な結果を得た。ADCによる実効精度は11ビットであり、最高エネルギー宇宙線の起源をつきとめる高感度大気蛍光望遠鏡群に搭載するフロントエンド回路としての有用な感度を持つことが示された。これを引き継ぎ、大気蛍光望遠鏡プロトタイプ実機に搭載して実現象を用いてのテストを平成11年度に行う予定である。
|