次世代のハイペロン核子散乱実験をめざして、バルクシンチレーター飛跡検出器の開発を進めた。本研究は、偏極陽子による偏極A粒子の散乱のようにスピンに依存したハイペロン散乱実験をめざすもので、従来のシンチレーションファイバーでは困難な実験に取り組むこと目的としている。前年度までの研究で直接バルクシンチレーター中の粒子飛跡を検出する可能性は確認できたので、本年度は宇宙線ミュオンの他に加速器によるビームをも用いて詳しい性能テストを行なった。 バルクシンチレーター中に生じる粒子飛跡を光学レンズ系により直接イメージインテンシファイヤー(IIT)の感光面に写像し、増幅した後、CCDカメラで記録する方法は光子を集める効率が著しく低いので光学レンズ系の設計に工夫を凝らす必要がある。先ず始めにπ・μ粒子のように単位長さ当たりの放出光子数が少ない粒子の場合と陽子や反応生成核を検出する場合のそれぞれに対して最適化を図れるレンズ系を設計・試作し、KEKの陽子シンクロトロンによるビームを用いてテスト実験を行なった。このレンズ系では反射鏡を用いて多面の画像を撮る方法を試みたが、光子の収集効率を上げると共に一基のIITシステムで立体的情報を得られることが確認できた。画像を詳しく解析し、光子スポット密度による粒子識別の可能性と限界、焦点深度の許容限界、境界面反射の影響などを調べる作業を進めている。これらを明かにすることにより、実際の実験に応じて最適のシステムを設計することが可能になる。次のステップは具体的実験計画に合わせたシステムの設計
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