超流動ヘリウム3表面上のウィグナー結晶の伝導度測定に関して、研究の進展があった。 ウィグナー結晶が形成されるとヘリウム液面に周期的な凸凹が現われ、その運動が誘起する液体内部の流れの影響を受けて、ウィグナー結晶の伝導度が決まることが分かっている。したがって超流動状態に転移すると液体内部に励起される準粒子数の急激な減少に対応する伝導度の上昇が観測される。この準粒子数は超流動エネルギーギャップの構造によって大きく変化することが予想される。特に、ギャップが異方的な場合には、異方性軸がどちらの方向を向いているかによって、伝導度に定量的な差が現われることが期待される。 超流動ヘリウム3にはA相と呼ばれる異方的なエネルギーギャップをもつ状態が知られている。A相ではギャップがゼロとなる点(ノード)がフェルミ面の極の位置に現われることが知られている。ノード近傍の運動量を持つ準粒子が多く励起されることが期待される。 今年度、超流動ヘリウム3に磁場を加えることで、超流動ヘリウム3A相を実現し、その上でのウィグナー結晶の伝導度の測定に成功した。その解析結果から、ノードの向きが液面に垂直であることがあきらかになった。
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