研究概要 |
本研究の目的は酸化物セラミックス中に注入された重水素と空気水蒸気中の軽水素との置換反応の係数およびその逆反応の係数の温度依存性を測定し、置換反応の同位体差と活性化エネルギーの解析から水素同位体置換反応におけるトンネル効果を検討し、その解明に資することである。 まず、5keVD_2^+を飽和注入されたSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-δ>,に0.5keVH_2^+を表面近傍に注入し続け、D-H置換に対するHの拡散の効果を測定した。又5keVH2+を飽和注入したSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-δ>に0.5keVD_2^+を表面近傍に注入し、H-D置換に対するDの拡散の効果を測定し、前の実験結果と比較した。これらの結果から、Hの拡散によるD-Hの置換は生じるが、Dの拡散によるH-Dの置換は殆ど生じないことが判明した。 次に5keVD_2^+を飽和注入したSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-δ>の温度をを室温から下げて大気・空気にさらすことにより生じるDの減少量の測定からD-H置換係数の温度依存を測定した。これらのデータからD-H置換反応係数の活性化エネルギーが0.4eVであり、高温におけるHの拡散係数の活性化エネルギー0.63eVより低いことが判明した。この結果はD-H置換に原子トンネル効果が関与していることを示唆すると考えられる。 最後に5keVD_2^+を飽和注入したL_2ZrO_3を大気・空気にさらすことによりD-Hの置換が観測された。 この結果は室温におけるD-H置換が酸化物セラミックス共通の現象であることを示すと判断される。
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