広い過冷却液体領域を持つ非晶質合金は、従来から非晶質合金を応用する上で一つの課題とされてきた難加工性を、大幅に改善できる超塑性を発現することが明らかになってきた。本研究では、Zr基非晶質合金について変形特性と組織を系統的に調べることにより、本非晶質合金の超塑性変形と微細組織との関係を明らかにすることを目的とした。 単ロール法で作製したZr_<65>Al_<10>Ni_<10>Cu_<15>金属ガラスリボンを、過冷却温度領域の673Kで、5x10^<-4>s^<-1>〜1.7x10^<-1>s^<-1>の範囲の種々の歪速度で引張試験を行った。引張変形後のリボンの微細組織をTEMにより高分解能観察した。その結果、歪速度1.7x10^<-2>s^<-1>及び5x10^<-2>s^<-1>においては、アモルファス構造を保持したまま高速超塑性を発現することが明らかになった。一方、5x10^<-3>s^<-1>以下の歪速度では変形中に結晶化し、その進行とともに全伸びが減少した。本金属ガラスの結晶化は、リボンの表面で始まり内部へと進行していくことが、断面TEM観察によりわかった。また、SEM観察の結果、変形中に結晶化したリボンの表面には、引張方向に直角な数多くの微小クラックが発生していたが、アモルファス構造を保持したまま変形したリボンには顕著なクラックは観察されなかった。 以上より、Zr_<65>Al_<10>Ni_<10>Cu_<15>金属ガラスの高速超塑性の発現は、過冷却液体の高い変形能によるものであり、高速超塑性変形後もアモルファス構造とクラックのない平滑な表面状態は保持されると言える。
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