食中毒シガテラの主要原因毒シガトキシンは、神経興奮膜の電位依存性Na^+チャネルに特異的に結合し、これを活性化することで、神経毒として作用するポリエーテル化合物である。13個のエーテル環が縮合した分子量1110の巨大分子シガトキシンは非常に挑戦的な有機合成の標的分子である。また、天然物の調達が極めて困難であることから、詳細な作用機構の解明や微量検出法開発に必要な免疫抗体調製のためにも実践的な化学合成による量的供給が不可欠である。本研究では、巨大ポリエーテル分子シガトキシンの全合成およびその構造を基盤とした新しい活性分子の創製を目的とした。 (1) FGH環部フラグメントの立体選択的合成:昨年度の本特定領域研究において開発した分子内ラジカル環化反応による立体選択的オキセパン環形成法をG環の構築に応用し、これにオレフィンメタセシス反応によるF環合成を組み合わせることにより、シガトキシンのFGH環部フラグメントの立体選択的合成に成功した。 (2) 鈴木クロスカップリング反応を用いる収束的ポリエーテル骨格の合成:アルキルボランとラクトンエノールトリフラートとのPd触媒による鈴木クロスカップリング反応を鍵反応として極めて効率的な収束的ポリエーテル骨格合成法を開発した。さらに、本反応を用いてシガトキシンのBCD環部の効率的な合成を行った。
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