研究概要 |
代表的海洋産天然物である、中員環エーテル構造を基本骨格とするモノ環状エーテル化合物群の立体選択的合成を行った。最も課題となるのは、如何にα,ω-位の立体化学を制御しエントロピー的に不利な中員環エーテル構造を効率良く合成することである。これを達成するためにスズエーテル/ルイス酸を用いるヒドロキシエポキシドの環化反応を適用した。本反応はexo-モード、S_N2で進行し、環化前駆体の水酸基、エポキシドの立体化学を選ぶことによりα,ω-位の立体化学を制御した中員環エーテル構造を立体特異的に合成することができるという特徴を有する。この利点を活かし、従来法では達成されていないα,ω-transに結合したアルキル側鎖を有する海洋産天然物を合成ターゲットとした。 初めに、代表的7員環エーテル化合物である(-)-rogiolenyne Dの合成研究を行った。(-)-酒石酸ジエチルから誘導したアセチレンフラグメントとSharpless不斉エポキシ化反応を含む数段階により得られるエポキシフラグメントの付加反応により得られる環化前駆体に対し(Bu_3Sn)_2O/Eu(fod)_3を用いる環化反応を適用したところ、高収率で望む7員環エーテル骨格が得られた。続いて、立体選択的なenyne側鎖、及びハロゲン基の導入を行い(-)-rogiolenyne Dの全合成を達成した。 次に、代表的8員環エーテルを基本骨格とする(+)-cis-dihydrorhodophytinの合成に着手した。mannoseから立体選択的に誘導されるエポキシフラグメントと先に得られたアセチレンフラグメントのカップリングを行い環化前駆体を得た。続いてルイス酸としてEu(fod)_3適用し環化を行い高収率で望む8員環基本骨格を合成した。更に立体化学を制御した側鎖の修飾を行い(+)-cis-dihydrorhodophytinの全合成を達成した。
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