研究概要 |
細胞毒性と水溶性がスペーサーの炭素鎖の長さの違いによってどのように影響されるのかを調べる目的で、炭素鎖長を変えた5種類のアシル化剤を合成した。2,3,4,6位をベンジル基で保護したガラクトースに種々のジオールを酸触媒下に反応させた。続いて1級水酸基を酸化してカルボン酸とした後、メチルエステルに変え精製した。再び加水分解してカルボン酸を得た。通算の収率は19-28%であった。一方、10-デアセチルバッカチン-IIIからドセタクセルを合成し、2',7位をトリエチルシリル基で保護した。これに前述の各種アシル化剤をEDCI/トルエン系でエステル化した。脱保護を行なって目的とする化合物を効率良く得ることができた。n=1である10-α-GAG-DT(482μg/ml),10-β-GAG-DT(301μg/ml)の水溶性と比較するため、5種類の誘導体の溶解度を測定したところ、意外なことに10-GAP-DT(n=4)が最大の水溶性を示した。これはスペーサーの長さがn=4のとき、バッカチン骨格に連結している親水性基(7-OH,2-OBz,4-OAc,2'-OH,3'-NBoc)が集中しているα-側にガラクトースが到達することが可能になって、水素結合などを通して水溶性を高めるコンフォメーション取り得るのではないかと推測できる。
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