精密重合法の進歩の結果、高分子の高度な分子設計ができるようになってきた。しかし高分子主鎖のキラリティの制御については、かなりの研究の余地を残している。本研究では、最近進展のめざましい不斉合成法を重合反応に応用することで光学活性高分子の合成を検討し、以下の結果を得た。 (1)不斉Diels-Alder重合:種々のビスジエンモノマーとビスジエノフィルモノマ一間のDiels-Alder重合を検討し、ルイス酸触媒を用いるDiels-Alder重合の可能性を示した。さらに触媒としてキラルルイス酸を用いると、光学活性高分子を容易に合成できることを明らかにした。 (2)不斉Aldol重合:ルイス酸触媒を用いる向山-Aldol反応をビスケテンシリルアセタール型のモノマーとジアルデヒドとの間の重付加に応用した。トリエチルシリル基を用いることで、高純度のビスケテンシリルアセタールモノマーを合成できた。触媒としては種々のルイス酸の中でSc(OTf)_3を用いた場合に比較的高分子量(Mn=55700)が得られた。キラル修飾したルイス酸を触媒を重合に応用したところ、対応する光学活性ポリ(ヒドロキシエステル)を得ることに成功した。 (3)不斉アリル化重合:アリルシラン類とアルデヒドとの反応(櫻井-細見反応)もまた、C-C結合形成のための重要な反応であり、一般に収率が良く、副反応も少ない。そこでビスアリルシラン型のモノマーを種々合成し、ジアルデヒドとの重合を検討した。この重合により、エキソメチレンとヒドロキシル基を持つユニークな主鎖構造の高分子が得られることがわかった。アリルシランのアルデヒドに対する不斉付加反応も最近研究されており、山本らのキラルアシロキシボラン(CAB)触媒をこの重合に用いると対応する光学活性高分子を収率よく得ることができた。
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