研究概要 |
シラシクロブタンは、合成が容易である一方、環による大きな歪みエネルギーを持ち反応性に富む化合物である。我々は、有機リチウムを重合開始剤として用いると1,1-ジアルキルシラシクロブタンがリビング的に重合することを見いだし、カルボシラン系両親媒性ブロックポリマーの合成に応用した。1,1-ジエチルシラシクロブタンのリビングポリマーにジフェニルエチレンを加えて成長末端の反応性を制御した後、シリル基で保護したメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)を作用させてブロック共重合を行い、さらに加水分解を行うことにより含ケイ素両親媒性コポリマーpoly(SB-b-HEMA)を合成した。このポリマーのメタノール溶液中における会合挙動を小角X線散乱(SAXS)法によって観測した。その結果、ミセルが球状のコア-シェル構造を形成することが強く示唆された。また、疎水鎖長の増大に伴いミセルの会合数が増加することが明らかとなった。さらに、poly(SB-b-HEMA)(26:24)のポリマーのメタノール/トルエン混合溶液についてSAXS測定を行った結果、ミセルの形状は混合比に依存して変化し、トルエンrichな溶液では、コアとシェルの構成成分が反転し、逆ミセルが形成されることがわかった。さらに、poly(SB-b-HEMA)(26:24)のポリマーが作る単分子層を圧縮しながらX線反射率(XR)測定を行った。その結果、単分子層の表面、疎水部-親水部界面、および単分子層-水層間界面から反射したX線が干渉することによって生ずるKiessig fringeが観測され、このfringeは圧縮が進むとともに小角側にシフトし、圧縮によって単分子層の厚さが増加することが明らかとなった。
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