本研究は、ナノメータレベルの高い空間分解能が期待されるケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)を用いた電位分布測定技術を開発することを目的にする。本年度はKFMをGaAsMESFETに適用するとともに、デバイスシミュレーション結果との比較を行い測定結果の妥当性を検証した。またKFMをGaAs/AIGaAsヘテロ構造、GaAs pn接合に適用し、本方法が表面電位の解明に有用であることを示した。主要な結果は以下のとおりである。 1. GaAs MESFETではゲート端での電界集中がHEMTに比べて弱いことを実験的に示すとともに、デバイスシミュレーションとの比較により、この原因が、表面準位による電界緩和効果のためであることを明らかにした。 2. アンゲートMESFETにおいて、ドレイン電極端に電界集中が見られることを見い出すとともに、デバイスミュレーションとの比較によりこの理由が電子の速度飽和と表面準位にあることを示した。 3. InAlAs/InGaAsヘテロ構造にKFMを適用し、空間分解能が40nm程度であることを明らかにした。 4. GaAs/AlGaAsヘテロ構造において、接触電位差がAl組成に依存することを示すとともに、この原因を電荷中性準位のAl組成依存性で説明できることを示した。 5. pn接合にKFMを適用し、接触電位差は表面準位のため小さく測定されてしまうこと、光照射によりこの電位差が大きくなることを示した。
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