地震の震源域近傍の強震動の空間分布や特性は、地震の震源メカニズムのみならず、断層面の幾何や断層面上でのずれの時空間分布に影響をうける。従って、地震動の早期予測という観点では、地震の震源パラメタの早期自動決定システムにおいても、点震源を仮定したメカニズム解の推定から更に一歩すすんだ解析が要求される。平成10年度本研究成果は、破壊が震源から両方向に伝播することを仮定しながら線状に並べた点震源でのモーメント解放量を強震計の波形データから線形インヴァージョンで求め断層向や破壊域を推定する、という簡便で自動化可能な手法を提案するとともに、既存の強震データを用いてM6-7の内陸地震へうまく適用できることを示した。 M6クラスの内陸の地震では、98年3月鹿児島県北西部地震、98年6月山口県北部の地震で、この手法から推定された断層面が余震分布と一致し、モーメントの大きい領域が他の研究結果と調和することがわかった。M7クラスの地震への適用としては、兵庫県南部地震を同じ手法でテストした。推定された点震源モーメントテンソル解は、南西、北西走向の2つの節面をもつ横ずれ断層を示し、これまでに決定されている解に類似する。2つの節面のそれぞれの走向に点震源を並べた場合で合成波形と観測波形の間のフィットを比較すると、北東一南西方向に並べた点震源分布で波形のフィットがよい。推定されたモーメントは、震源の南西方向に約10km、北東方向に約30kmの約40km長の範囲に集中し、余震分布やこれまでの震源過程の研究結果と調和する。また、大きなモーメントの解放が、震源の北東側と南西側それぞれに見られる。これらのテスト結果は、M6からM7クラスの内陸の地震について、地震発生後短い時間内に、断層向、破壊域およびアスペリティの位置が推定できる可能性を示唆する。
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