研究概要 |
従属栄養生物である動物は炭酸ガス還元体を食料として入手し、呼吸によって取り込んだ酸素を用いて酸化することにより、エネルギーを獲得している。この酸素の取り込み・運搬システムは巧妙に仕組まれたアロステリック制御機能に依存しており、この酸素の結合能を制御する仕組みを人工的に発現するため、イミダゾールのポルフィリン金属中心への配位を利用して、安定な酸素錯体を協同的に捕捉できるシステムの実現を目指した。イミダゾール置換ポルフィリンを用いると、ポルフィリンが中心をずらして平行に配列した強固な相補的2量体錯体を形広することを見出している。一方ピケットフェンスによって保護されたポルフィリン環上の空間は酸素の結合に安定な場を提供できるので、モノイミダゾール置換-トリス(ピバロイルアミノフェニル)置換ポルフィリンFe(II)錯体を用いて、ポルフィリンニ量体を形成させることにより、一方の酸素結合サイトへの酸素の結合によって、相補的配位結合をしているもう一方のポルフィリンBの酸素結合サイトへの協同的酸素捕捉が行われ、酸素分子の捕捉に対して共同効果を期待することができると考えた。この設計指針に基づいてニトロベンズアルデヒドとN-メチルイミダゾールカルボキシアルデヒド共存下に、プロピオン酸中還流を行いピロールの縮合環化反応を行った。粗生成物をSnCl_2-HClを用いてニトロ基を還元し、シリカゲルカラムで最初に溶出するテトラアミノ体そ除き、トリス(アミノフェニル)-N-メチルイミダゾリルポルフィリンのアトロプ異性体混合物を分離した。これをベンゼン中シリカゲルを加えて加熱還流を行うと、高極性側のスポットが著しく増加し、α,α,α-トリアミノフェニル体を与えた。アトロプ異性体混合物を用いてアミノ基に3つのピバロイル基を導入したピケットフェンスポルフィリンを既に得ているので、以上の探索により合成ルートを確立した。
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