本研究では、常磁性体母相中に強磁性金属の超微粒子を分散させた磁性グラニュラー膜が温度や外部磁場に対し示す特性を各微粒子における磁化状態の変化の結果と捉え、その微細磁気構造をローレンツ電子顕微鏡法で動的にその場観察し、マクロな磁気特性の解明に資することを目的とした。そのため、電子顕微鏡内に外部水平磁場を印加するコイルを新しく考案・試作し、現在、その特性を測定中である。また、試料として鉄-モリブデンアモルファス合金から熱処理を施して鉄微粒子を析出させた薄膜を用い、加速電圧200kVの電界放出型透過電子顕微鏡を使ったローレンツ顕微鏡法(Fresnel モード)により、直径20nm〜60nmの鉄微粒子から単磁区構造になっていると思われるコントラストが検出できた。しかし、従来、微粒子をローレンツ顕微鏡法により観察したという報告例がないため、10〜50nm程度の単磁区微粒子の像の正確な解析が必要であった。そこで、粒子内の磁場、及び、粒子外部へ漏洩している磁場を考慮し、粒子の持つ内部電位による回折効果をも取り入れたローレンツ顕微鏡像の計算機シミュレーションを行い、実験結果を定量的に解析することができるようになった。これより、鉄単磁区微粒子が、確かに観察されていることを確認することができた。また、直径10nm以下の微粒子単独では、観察可能なコントラストがつかないこともわかり、鉄一酸化マグネシウムグラニュラー膜のローレンツ顕微鏡像で観察されるコントラストは、数nmの粒子がいくつか磁気的にカップリングしていることを示すものとの結論が得られた。
|