研究課題/領域番号 |
10131227
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
垣内 隆 京都大学, 工学研究科, 教授 (20135552)
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研究分担者 |
保原 大介 京都大学, 工学研究科, 助手 (60303864)
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キーワード | 自己組織膜 / チオール誘導体 / アルカンチオール / Au(111) / STM / 還元的脱離 / 相分離 / 相互溶解度 |
研究概要 |
メチレン鎖長が等しいHS(CH2)10CH3(UDT)とHS(CH2)10COOH(MUA)の混合溶液から金(111)面上に形成させた二成分自己組織膜(SAM)では、全組成比にわたってこのような一本の還元的脱離ピークしか観察されず、溶液中のMUAの割合に対してピーク電位をプロットすると、MUAの割合が増加するにつれてほぼ直線的にポジティブ方向ヘシフトする。このような挙動は、表面でほぼ均一に2種類のチオールが混じりあっていることを示唆しており、全ての混合比において2本のピークが観察される長鎖のアルカンチオールHS(CH2)15CH3(HDT)と短鎖でカルボキシル基末端を持つチオールHS(CH2)2COOH(MPA)の二成分相分離SAMの場合2)と対照的である。 一方、ナノメートルスケールで相分離した膜はHDTとMPAの組み合わせの二成分SAMだけでなく、他のチオールの組み合わせでも観察される。用いるチオールの種類による二成分SAMの相挙動の違いを明らかにするために異なる組み合わせでアルカンチオールとカルボキシル基末端を持つチオールの二成分膜を金(111)面上に形成させ、相分離が起こるために必要な条件を検討した。CVで独立な2本のピークが観察される相分離した膜を形成させるには、二成分それぞれの単一成分膜の還元電位の差)が0.2V以上必要なことが分かった。 CVのピーク面積より見積もった二成分SAMの表面組成とCVで観察される2本のピークの電位をプロットし、膜中のチオールの組成に対してピーク電位が直線的に変化すると仮定して、相互溶解度を求めるとUDT/MPAの場合、MPAのドメインにおけるUDT分子の溶解度は32%、一方、UDTのドメインにおけるMPA分子の溶解度は21%となった。これに対し、HDT/MESAの二成分SAMでは、MESAドメインにおけるHDT分子の溶解度が17%、HDTドメインにおけるMESA分子の溶解度は10%となり、UDT/MPA系の場合に比べ、相互溶解度が小さいと言える。
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