量子構造中の電子は、極微領域で超高速に振る舞うため、観測手段がなくその挙動に関する理解を困難にして来た。本研究では、フェムト秒光パルス技術とナノテクノロジーを組合せた超高速走査型プローブ顕微鏡を開発し、電子がナノメートル空間に閉じ込められた一次元電子系の光機能を明らかにすることを目的とする。今年度はCWレーザー光励起による電流を検出する原子間力顕微鏡(光電導性AFM)を開発し、有機薄膜のナノメートル光電子物性を検討した。試料は、銅フタロジアニン(CuPc)のITOガラスへの真空蒸着膜(厚さ100nm〜10nm)を用いた。自作したAFMは、フィードバック回路、ドライバ、光てこ法によるPSD、ピエゾアクチュエータから構成される。カンチレバーは、金蒸着されたSiNを用いた。高速電流アンプにより、試料の暗電流を検出した。He-Neレーザー(633nm)、またはAr^+レーザー(514nm)をプリズム上に配置した試料に全反射角で入射し、エバネッセント光による励起を行った。チョッパーと同期した局波数におけるシグナルをロックインアンプにより検出することにより光電流を観測した。試料のナノメートル局所領域における光電導を調べた。励起光の照射により光電流が観測された。また、光電流は励起波長依存性を示し、吸収スペクトルとほぼ対応した。I/V特性は電極構造を反映して、整流特性を示した。ピエゾアクチュエータの二次元スキャンにより、光電流像が得られた。以上より開発した光電導AFMにより、量子構造の局所光電物性の観測が可能になった。
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