研究概要 |
本年度は下記の3つの研究項目について研究を行った。 (1) 有機シラン系単分子膜レジストの気相成長 気相法により有機シラン単分子膜を作製した。光洗浄したシリコン基板と原料である有機シランを密閉容器に入れ全体を加熱し、基板表面を有機シラン蒸気にさらすことによって単分子膜を作製した。原料分子としてoctadecyltrimethoxysilaneを用い、処理温度150℃・処理時間3時間で作製した、炭素数18個のアルキル基からなる単分子膜(octadecylsilyl,ODS,膜厚約2nm)が、化学エッチングに対する良好な耐久性を示したので、このODS膜をレジストとして用いた。 (2) AFMによるOD3単分子膜のパターニング ODS単分子膜へのパターン描画は、導電性AFMプローブの先端から単分子膜へと局所的に電流を注入することによって行われる。注入する電流をpAからnAレベルで一定に制御できる定電流制御AFMリソグラフィ技術を開発し、パターニングの再現性を向上させることができた。 (3) 選択無電解めっきによる金微細構造の作製 ODS膜上へ描画したパターンを、金の微細構造へと転写するプロセスを開発した。まず、描画したサンプルをフッ酸によってエッチングする。電流を注入しODS膜を分解した領域では、フッ酸により酸化膜がエッチングされシリコン基板が露出する。それに対し、電流を注入していない領域ではODS膜によって酸化膜はエッチングから保護される。次に、フッ酸処理した試料を置換型金無電解めっき液に浸漬する。シリコン基板が露出している領域では、シリコンと金イオンが反応し金が堆積するが、ODSに覆われている領域では置換反応は起こらないため、プローブ走査した領域だけが金めっきされる。その結果、プローブ走査パターンに対してポジ型の金微細パターンが形成される。線幅200nm弱の金ラインをシリコン基板上に作製することができた。
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