ステンレス鋼などのFe-Cr合金を硫酸中で方形波電位変調電解することによりポーラス構造を有する酸化物皮膜を形成することができる。成膜プロセスには2種類あり、クロムの活性態と不働態電位を繰り返し分極するアノード型、および過不働態と不働態電位とを交互に分極するカソード型それぞれによって、形態は類似しているが電気化学的性質の異なった皮膜を生成する。これらの皮膜の、電子的性質を電気化学インピーダンス法ならびに光応答電流法で検討したところ、インピーダンスから得られる界面容量については、アノード型では膜厚に比例して容量が増大することより皮膜を構成する微粒子の表面にて容量を発生し、かつこれらの粒子が相互に連結して下地合金との間に導電性を示す経路が存在することが明らかとなった。一方、カソード型では容量は下地鋼と同様で皮膜厚さに依存しなかった。従って、カソード型膜では構成する微粒子が下地との伝導性を持たずに堆積していることが分かった。一方、光励起によって生じる電子・ホール対の分離によって生ずる光電気化学応答については、アノード型皮膜では応答に厚さに対して極大を示した。これは、厚さの増大に対して電子・ホールが増大するが再結合確率も増大するためにこのような挙動を示したと思われる。一方、カソード型ではインピーダンス同様、厚さに依存しない光応答を示した。 さらに同様のプロセスは他の合金系にも応用可能である。Fe一Ti合金上に厚いポーラスな構造をもつTiO_2皮膜の生成が可能なことを明らかにした。 今後ポーラスな構造と電子的特性を生かした機能電極表面への応用が期待される。
|