電気化学セルと文字どおり原子レベルでの実空間分解能を持つ走査プローブ顕微鏡を組み合わせた電気化学STM/AFMにより、原子スケール分解能で電極表面の構造や電子状態ををin-situで観察しながら、分子層単位での構造規制(吸着、配向成長等)が可能な電気化学的手法による原子層エピタキシー手法の確立した。本年度は特にDNA分子を対象とし、特徴的な水素結合に起因する、相補的かつ異方的な自己組織構造を形成する。さらに、構造規制されたDNA分子間の化学結合力を、化学的に修飾したAFM探針を用いて、分子単位で直接評価した。 第1に、構造規制表面上での単鎖DNA自己紹織化構造の形成制御技術を確立した。.塩基数 1〜80までの数種類のssDNA分子および長鎖DNAが0.1Vvs.NHEの電位で、Au(111)表面に可逆的に吸着することが分かった。掃引速度依存性により、反応律速であることが明らかになった。 電極電位のみならず、pH条件の制御によっても、単鎖DNA分子の特異吸着構造(自己紹織化構造)が制御可能であることが明らかになった。 第2に、DNA分子修飾探針を用いた表面分子識別 構造規制された表面上で、分子スケールでの分子識別を狙って、チミン分子単鎖オリゴマーを修飾したAFM探針により、チミンおよびアデニン分子で表面修飾したAu(111)面との化学結合力を測定した。その結果、チミン-チミン間、チミン-アデニン間の結合力が各々400pNと1300pNであった。これは、約50分子対が結合に関与していると考えたときの、相補的な水素結合力を直接評価したものだと考えられる。
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