研究概要 |
π-共役系高分子と遷移金属錯体から構成される共役錯体は、新規なレドックスシスデムとして位置づけ.られる。ポリ(o-トルイジン)とパラジウム錯体との銘形成挙動を詳細な検討したところ、錯形成が構造的に制御できることが判明した。 π-共役系高分子として誘導体であリイミン部位とアミン部位がほぼ等しい割合(エメラルジン構造)で存在する可溶性ポリ(o-トルイジン)を用いた場合、Pd(OAc)_2との錯形成において電荷移動に基づく吸収が長波長側に観測される。滴定により、o-トルイジンユニットに対し4:1の比でパラジウムが錯形成していることが明らかになった。ところが、三座配位複素環系配位子(BPHEPA)のパラジウム錯体とポリ(o-トルイジン)との錯形成においても、同様なスペクトル変化が観測されたが、o-トルイジンユニットに対し2:1の比でパラジウムと錯形成していた。 キノンジイミン構造を持つモデル化合物との錯形成を比較することにより、パラジウムに対しイミン窒素で配位していることが示唆される。錯形成比に違いが見られたのは、パラジウム錯体の配位数の差異に基づくと考えられる。Pd(OAc)_2の場合には配位サイトを二つ有するため、ポリ(o-トルイジン)のイミン部位が二つ配位可能であるのに対し、BPHEPAを有するパラジウム錯体では配位サイトが一つしかない。前者ではパラジウム錯体でクロスリンクした錯休が形成され、d,π-共役ネットワークシステムが構築されているものと考えられる。一方、後者ではπ-共役シングルストランドシステムが形成されていると思われる。錯形成させるパラジウム錯体の配位数の違いが共役錯休の構造に大きく反映しており、錯体構造を制御できることが明らかになった。
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