フッ化アンモニウム水溶液はSi(111)面の平坦化のみならず、シリコンの処理行程において頻繁に用いられる。我々は水溶液中において、溶存酸素が平坦化に大きな影響を及ぼすことが見出されたことから、フッ化アンモニウム水溶液中の溶存酸素がSi(111)面の平坦化に及ぼす効果を調べた。その結果、亜硫酸アンモニウムを添加して溶存酸素を除去した系では、溶存酸素を含む溶液と比べて平坦化に要する時間が著しく短縮されることがわかった。例えば、0℃の40%のフッ化アンモニウム水溶液中で15分間の処理を行った後の表面をAFM像を観察すると、酸素を除去した場合にのみ明瞭なステップ・テラス構造が見られた。この結果はフッ化アンモニウム水溶液中においても、表面平坦化に酸素の影響があることを初めて示したものである。 我々はシリコンの平坦化過程が、その溶液中においてシリコン電極に観測される電気化学的なアノード電流と密接に関連していることを見出した。また、溶存酸素が存在する場合にはこのアノード電流が減少することを見出している。このことから、溶存酸素はシリコン表面をランダムに酸化攻撃して表面を乱す作用をするのではなく、ステップエッジやキンクを不活性化し、平坦化をもたらす溶解過程そのものを阻害することを示していると考えられる。 以上の知見に基づいて、シリコン表面の平坦化に及ぼす光照射効果についての研究に着手した。これまでに、40%フッ化アンモニウム水溶液中において、弱い強度(0.2mW/cm^2程度)の可視光を照射すると平坦化が加速されること、また、それより強い光を照射するとかえって表面構造が乱れることを見出している。
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