両親媒性分子が形成するミセル・ベシクルなどの分子集合体の形成ー崩壊を電気や光などの外部刺激により制御することは、集合体内部に内包した薬物、香料などの徐放性の制御などへの応用から興味深い。本研究では、光電気化学反応により界面化学的性質が可逆的に変化する機能性部位を導入した界面活性剤を用いてこれらの分子集合体を調製し、その形成および崩壊を光電気化学的により可逆に制御することを試みた。 1) アゾベンゼン修飾界面活性剤を用いたべシクル形成の光電気化学的制御 可逆な光異性化反応および電気化学反応を示す界面活性剤として、アゾベンゼン修飾カチオン性界面活性剤(AZTMA)を用い、これをアニオン性のSDBSと混合することによりベシクルを調製した。このベシクルに紫外光を照射してアゾ基部分をトランス体からシス体へと光異性化させることにより、ベシクルが崩壊してラメラ相に変化すること、さらに引き続きこの溶液に可視光を照射することにより、ベシクルが再形成することがわかった。さらに、ベシクル内部に内包した水溶性の薬物の取り込みー放出を光電気化学的に能動制御できることがわかった。 2) フェロセン修飾界面活性剤を用いたミセル中の可溶化の電気化学的制御 酸化体と還元体で界面化学的物性が大きく異なることが知られているフェロセン修飾非イオン性界面活性剤中に種々の油溶性物質を可溶化させ、可溶化平衡定数に及ぼすフェロセニル基の酸化、還元の影響について検討した。その結果、油性物質の取り込みと放出を電気化学反応により可逆的に制御できることがわかった。
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