研究概要 |
1. 最も高濃度の反応場である固相において、化学反応の駆動力として従来用いられてきたエネルギーに代わって、反応系全体の高速振動粉砕に基づくメカノケミカルなエネルギーを利用し、フラーレンC_<60>を対象とする構造変換反応を試みた。特にHeを内包したフラーレンHe@C_<60>とKCNとの固体反応によって、極めて選択的にHeを内包した二量体、He@C_<120>が合成できることを見いだした。さらに他の試薬としてK_2CO_3、KOH、微少量のアルカリ金属類、および4-aminopyridineなどの有機固体塩基が有効であることを明らかにした。また、He@C_<60>を用いるC_<60>核のスクランブル実験により、二量化反応条件下にてC_<60>とC_<120>が解離平衡にあることを明らかにした。 2. 高速振動粉砕法を用いて4-aminopyridineの共存下、フラーレンC_<70>に対してC_<60>の付加反応に関する予備実験を行ない、ヘテロ二量体C_<130>の生成についての予備的知見を得た。 3. 高速振動粉砕法を用いてC_<60>と有機アジドとの反応を行ない、良好な収率で対応するC_<60>のトリアゾリン誘導体が生じること、さらに、tetraceneおよび9,10-dimethylantharaceneなどとの[4+2]付加環化反応において、液相反応では単離できない生成物が単離可能となることを見いだした。 4. 液相において、C_<60>とシリル保護したプロパルギルアルコールのアセチリドとの反応を鍵反応として極性官能基をもつC_<60>誘導体の合成を行ない、その水溶性について明らかにした。
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