研究概要 |
オレフィンの触媒的不斉エボキシ化は、光学活性医薬品の合成に有用な光学活性エボキシドを得ることができることから、創薬研究において極めて魅力的な反応の一つである。しかしながら、これまで汎用性が高く実用的なα,β-不飽和ケトンの触媒的不斉エボキシ化反応の報告はなされていない。そこで、新しいイッテルビウム錯体の調製と、これを触媒とするα,β-不飽和ケトンの触媒的不斉エボキシ化反応について検討した。 不斉リガンドとして(R)-ビナフトールを選択し、Yb(O-i-Pr)_3と反応させることによりα,β-不飽和ケトンの触媒的不斉エボキシ化反応に有効な錯体調製を検討した。市販のYb(O-i-Pr)_3を用いた場合、再現性が乏しいという結果が得られたため、添加するモレキュラーシーブス4Aや、水の当量数についても精査した。その結果、乾燥したモレキュラーシーブス4Aの存在下、テトラヒド口フラン中、Yb(O-i-Pr)_3と(R)-ビナフトールを2:3の混合比で調製し、少量の水を添加すると高活性の触媒を調製できることが分かった。イッテルビウムの代わりにイットリウムを含有する触媒を調製しエボキシ化反応を行ったところ、イッテルビウム錯体とほぼ同等の不斉触媒としての機能を有することを確認した。このイットリウム触媒もNMRにおいて明瞭なピークを観測できなかったが、蒸気圧降下法による分子量測定の結果、約70000に達する分子量を持つことが分かり、非常に強く会合した超分子であることが分かった。また、cis-エノンのエボキシ化反応の場合、ビナフトールの3位にヒドロキシメチル基を導入した誘導体を用いると、cis-エボキシドが収率良く得られることも見いだした。
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